死闘!長居スタジアム

ラストプレーが「あれ」だっただけに、試合終了直後は悔し涙がにじむぐらいだったんだけど、頭を冷やしてから振り返ってみると、すごい試合を見たなぁ。J史上、とまでは言わないにしろ、セレッソ史上に残るスコアレスドローだったと思います。唯一残念なのは、この名勝負のジャッジが柏原主審だったことぐらいで・・・。

鹿サポ一同の切実な願いだったんだろうけど・・・今年も叶いませんでしたね(笑)

この試合のセレッソの意図はかなり明らかで、まずはゴール前でフリーにさせない、スペースをつくらない。ここ数試合は隙を見て上がりまくっていたブルーノが、後半のある時間帯を除いてはまったく上がらなかったことからみても、それがよくわかる。一方の鹿島は、ともかく2シャドーを徹底マーク、特に古橋には仕事をさせるな。実際、今日の古橋は、あまり脅威を感じるようなプレーはできていなかった感じ。

それにしても前半のセレッソは明らかにおかしかった。通常なら簡単に通るパスが通らなかったり、せっかくのチャンスに片方に選手が偏って、もう片方のスペースががら空きだったり。もちろん、鹿島のプレスが有効だった部分もあるけど、それだけでもないような感じ。7連勝中+2位鹿島との直接対決ってことでにわかに騒ぎ出したマスコミ、それに加えて27,000人を超える観客がかもし出す、ちょっと異様な雰囲気に呑まれていたか。まぁそれでも、今年のセレッソを支える「堅守」の部分は健在だったのでよかったけどね。危ない場面はありながらも、最後の一歩で身体を寄せてたり、足が出てたり。

深井のマークが前田ってのは、仕方がないながらも危ないなぁって思ってたんだけど、案の定前半はかなり自由にさせてしまってたね。2回ぐらい完璧に裏を取られてやばかったんだけど、よくあそこでしのいだと思う。あそこで失点してたら全然違う展開になっていたのでは。

それにしても・・・前半だけで4枚のイエローカードは明らかに多すぎ。おかげでこちらは、ファビが2試合欠場確定+モリシも2度目のリーチ。ファビはもう長ーいこと我慢してたから、そろそろ仕方がないな、と思うけど、モリシは多すぎるな・・・。

これらすべてが、あの怒涛の後半への布石だったと、このとき誰が予想しただろうか(大げさ)

まず後半8分、アキが「異議」でイエロー。完全に「いらんカード」。この後の出来事を思えば、どれだけ悔やんでも悔やみきれない1枚。

直後の9分。スルーパスに抜け出したモリシを倒した新井場が一発レッド。この場面、ファウル自体はそんなにひどいものではなかったんだけど(まぁユニを両手で引っ張ってるぐらいだから、ファウルなのは確か)J公式を見るとS5=「得点機会阻止(他)」となっている*1。後ろから岩政も来ていたので、完全な意味での「得点機会」だったかどうかは微妙だけど、まぁGKと1対1になりかけてたから、やむなしか。(もっとも、1対1になったところでモリシが決められていたかというと(ry )

11対10。ここで深井か本山を下げてDFを投入してくるかと思ったんだけど(正確には期待していた)セレーゾ監督はこの場面では動かず。しかし、ここからの5分間は当然のようにセレッソがゲームを支配していただけに、このまま数的優位を保てていれば、おそらくは勝てていただろう。しかし・・・

後半12分、久藤ちゃんにイエロー。これでファビと同様、2試合の出場停止確定。あちゃあ・・・。

そして後半17分。PA内でシュートを打ったアキの足がそのまま大岩の足にヒットして2枚目のイエロー、つまり退場。

去年のアウェイ清水戦でのヨシトの2枚目に近いもんがある。つまり「止めようにも止めれないプレー」ってのがあって(無理に止めればそれが怪我の原因になりかねないような体勢)そういうときのファウルは、まぁファウルとしてとるのは当然として、そこでカードを出すなよ!という。それともなにか、怪我してでも無理矢理止めろってか。

た、だ、し。アキの場合、1枚目のイエローが「いらんカード」だったから、あまり同情の余地ナシ。そういえば、Footvalのインタビューで言ってた「試合後にヨシトをぶん殴った事件」が、まさに1年前の今日(浦和戦)でした。同じ日にアキが退場になる・・・なんたる因縁(苦笑)

ここからが、この30分が、セレッソ史上に残る激闘だった。どちらも退場者をひとりずつ出しているため、当初のゲームプランは既に崩壊している。そして、ふたりいなくなったピッチにはいつも以上にスペースがある。さらにハーフタイム時点で言われへんチーム(笑)も同点だった。これらの要因が、双方にすさまじいまでの攻撃姿勢を貫かせる。

どちらかといえば攻勢だったのは鹿島。しかし、ともかく楽にはシュートを打たせない守備と吉田の好セーブが光る。一方のセレッソは、もはや「お家芸」と言ってもいい、切れ味の鋭いカウンターを見せる。しかし、いつもと違って「シュートに行くべき場面でパス」というプレーが何度かあった。ここももったいなかった・・・結果的に見れば、このときの消極的姿勢が、最後のワンプレーでの「あれ」につながった可能性は否定できない。

鹿島の方では、曽ヶ端の果敢な飛び出しも忘れてはいけない。最後の方は、半ば「10人目のフィールドプレイヤー」と化していた。セレッソと当たるときの曽ヶ端はたいてい「ヘボキーパー」で、私も内心「今日もまたやらかしてくれるか」と期待してもいたんだけど(笑)どうしてなかなか、今日の曽ヶ端だけは中の人が違った。

一方、セレッソですさまじかったのはファビーニョ。スペースの増えた中盤をひとりで埋めきるほどの壮絶プレー。惜しむらくは、今日の相方が布部ではなくて下村だったら、もう少し負担が軽くなっていたかもしれない(いや、今日の布部もよくやっていたと思うんだけどね。ただ、スペースを埋める動きの量と質という点ではもはや下村の方が上。)そして、もしここでいま少し体力が残っていたら・・・。

途中、FC東京リード(つまり言われへんチームビハインド)の途中経過が入る。がぜん盛り上がるスタジアム。

こうなると、もう戦術がどうとかいう問題ではなくなる。ただひとつ、どちらがより本気で「勝ち」を求めているのか。

そしてこの試合においては、「勝ち」への欲求の強さすらも互角だった。そうだとしか思えない。

残り5分をきったところで、FC東京勝利の速報。セレサポも鹿サポも拍手喝采(笑)

同居人(実兄)「これで鹿島は、ドロー狙いに切り替えるか?」
  私「絶対にない」(即答)

果たして鹿島は攻め続ける。しかし、本当にあとボール1つ分ほどのところを詰める寸前に壁となって守りきるセレッソ

ロスタイムのラストワンプレーかと思われた鹿島のCK、跳ね返したボールは素早くつないでファビーニョの元へ。CK直後だから鹿島のDFは1枚だけ。猛然と駆け上がるファビーニョ、それをサポートするべく走りこむブルーノ。鹿島は曽ヶ端がPA外に飛び出す。トラップしたボールがいったんは曽ヶ端に当たるものの、再びファビの足元に収まる。曽ヶ端をかわしたファビーニョゴールマウスにはDFがひとりだけ、そこにシュート・・・!

・・・無情にも、右へと逸れていくボール・・・。

あのとき、もし自分で打たず、ブルーノに出していたら、と言ってはいけないだろう。あの場面は自分で打たなきゃいかん。たまたま入らなかっただけだ・・・(ノД`)

ここで試合終了のホイッスル。双方ともに、地面にばったりと倒れこむ。四文字熟語で言うなら死屍累々。それほどの死闘だった。




結果だけみれば、双方勝ち点1を分け合った(というか、勝ち点を2つ取り損ねた)試合。特にセレッソは、勝ち点で浦和に並ばれ、得失点差の関係で4位に交代。鹿島も鹿島で、勝っていれば首位交代だった。もったいないゲームだったと言えるかもしれない。

が、現場で見ていた人間にとっては、そんなことはどうでもいい。最後の1分1秒まで勝利を諦めなかった両チームの「攻めの姿勢」こそ、賞賛されてしかるべきだし、実際、試合後の観客はドローでありながらも大拍手で選手達を出迎えていた。ゴール裏が、本来なら勝ち試合の後でしか歌わない「大阪の街の誇り」をあえて歌ったのも、たぶんそういうことなんだろう。

こういう試合があるからこそ、生観戦はやめられない。

かの有名な武藤文雄氏のブログより、つい先日のエントリの一節を引用したい*2。1993年10月28日、あのドーハの悲劇について寄せた一文。

改めてサッカーの素晴らしさを知った。人が死んだ訳でも傷ついた訳でも無い。生活に困る程にカネを失った訳でも無い。それでも、これだけ悲しい想いを味わう事ができる。

今日の試合は、決して悲しいものではなかった。連勝記録こそ止まったけれど、まだ無敗記録は継続中。しかし、猛然と突き進んでいたチーム(とサポ)にブレーキがかかったこともまた事実。

ただ、スコアレスドローという結果であっても、時としてこれほどまでに心を揺さぶる試合となりうるという事実は、今日長居スタジアムに足を運んだ27,000人あまりの観客の記憶にしっかりと留めおかれると思う。

願わくば、今日の観客が、この興奮を求めて、また長居に戻ってきてほしいなと。そして今度は、勝利によってスタジアムが盛り上がってくれればいいなと。

*1:ちなみにS4とS5の違いは、GKとそれ以外。だったはず。

*2:エントリの内容自体とはまったく関係のないことですので、あえてトラックバックは送りません。