Optaで見る2005年前半のセレッソ

PDFですが、J公式にこんなファイルがあがってました。ちなみにこちらからすべてのチームのデータにとべます。

これ、なかなか面白いっすね。サッカーなんてもんは基本的に「一瞬のひらめき」の積み重ねのスポーツだと思うのですが、それでもその積み重ねがひとつのデータとなると、それぞれのチームの色というか、特徴がはっきりと出る。正直、データフェチとしては、こういうのを見てるだけでたまらんもんがあります(笑)

以下、このデータをもとに前半戦のセレッソを解析してみる。


セレッソで言うと、まず主要6項目中で群を抜いて多いのがタックル。回数456、成功率82.0%はともにJ1の18チーム中第1位です。すげー。また、インターセプトも144回で4位、ブロックが5位と、ここら辺を見れば今年のセレッソがいかに守備的にシフトしているのかよくわかる。

一方攻撃面はというと、これはお世辞にも「いい」とは言えない数字の連続・・・特に、枠内シュート率の17位は「あちゃー (ノ∀`)」って感じ。もっと精進しましょう>選手のみなさん

ただ、その中で面白いのは「ドリブル・ラン」。回数自体は18位と最下位なのですが、実は成功率は2位。それも85.8%という数字はただごとじゃない。セレッソには是や古橋、モリシ、久藤といった、ドリブルを使用する機会の多い選手が多いにも関わらず。かといってパス数は平均的な数字。ということは、ボールを持ったらできるだけこねずにパスを出し、かつできるだけ少ないパス数、短い時間で前線へ運ぼうとする。

ちなみにこちらが(思い出したくもない)1年前の同時期のスタッツ。特に守備関連の数字を中心に、今年とは比較にならないほど「どん底」な数値ですが、この中でさえドリブル・ランの成功率は85%の2位。まぁ、去年はヨシトがいたからってのが大きいとは思うけど。

昨年末に、私はこんなことを書いてます。

一方、東京V。このチームのアイデンティティは言うまでもなく「中盤パス回し」。セレッソも割と1タッチパスを多用するのですが、こちらは「ゴール前までの最短距離」を目指してのパス回しなので、東京Vとは真逆とも言える。まぁ、だからこそセレッソは東京Vが大の苦手なんだろうけど。

・・・Optaの数字が、私の推論をちょっと後押ししてくれているようで、ちょっとびっくり(笑)去年と今年、セレッソはメンバーもサッカーもずいぶん変わりましたが、実は基本的なところは変わってなかったりするんだね。

で、そのパスですが、出し手/受け手の関係を見ると、もう一目瞭然ですね。今年のセレッソのパス交換の核は久藤ちゃんであると。まず受け手として、前田やボランチ陣からパスを受ける(ヤナギからのパスが極端に少ないのは、単純に「逆サイドだから」と考えていいでしょう。)。パスを受けたら、まず前線へのパスを試みようと考え、それが難しいようならボランチに戻す。まさに「攻撃の起点」のあるべき姿。

ここで特筆すべきは、モリシとの関係。パスの出し手としても1番多くパスを出しているのは、右サイドと右シャドーの関係を考えれば当然ですが、逆にモリシのパスを久藤ちゃんが受けているケースも多い。というか、実はこのふたりの間でのパス交換がチーム内での1位2位だったりする。ちなみに3位4位は是・古橋の左サイドコンビなのだが、それにしても右サイドには及ばない。

これはつまり、モリシのプレーエリアの広さと久藤ちゃんのカバーリングのよさ、そしてパスセンスを現していると言えるのではないか?つまり、モリシが守備ラインまで下がってプレスをかけてボールを奪う→奪ったボールを出しやすい位置は、久藤ちゃんがばっちり押さえている→パス成功。もちろん逆のケースも多々あるでしょう。そして、相手陣内に入ったときの久藤ちゃんのパスのうまさは、いまさら説明するまでもない。モリシやアキ、古橋の動きを実によく見ていて、的確なパスを出す。アーリー気味のが多い(これはプレーエリアとパス数の関係からもある程度解読できる)けど、えぐることもあれば内側に切り込んでくることもある。逆サイドの是のプレースタイルと比較すれば、久藤ちゃんのプレーの幅広さがどれほどチームにとって重要であるかがよくわかる。

守備の方なのですが、これはこちらのデータ(これもPDF)を見ていただいた方がわかりやすいかと。前半戦をぶっちぎりの首位で終えた鹿島だけは、詳細データがついているのですが、ここで他チームとの比較の数字もいくつか出てきます。ここで特筆すべきは、なんといってもサイドチェンジ数の第1位。これは「選手別ロングパス成功率」の9位にランクされている下村の存在が大きいかと。

そしてもうひとつ、セレッソが高い順位にいるのが、タックルラインの高さ(3位)。今年のセレッソは(いや、今年か)DFラインを低めに置いてるはずなのですが、それがこの位置。つまりこれは「前からのプレスが有効に機能していること」「ボランチやDFが積極的にインターセプトを狙っていること」を意味する。後者の傍証として、選手別インターセプト成功数ランキングの5位にブルーノがいることもあげておこう(ドゥトラ、今野と同数)。前線やボランチがキツくプレスをかけ、苦し紛れのパスを出そうとしたところをするっと掠め取るのがブルーノ。これも試合中よく見る光景ですね。

しかしここでも頭が痛くなる数字も。「セットプレーからの失点数」は10位(これはいちばん多いチームが1位なので、順位が大きいほど失点が少ないことを意味する)と、そう悪い順位でもないのに、被CK成功率ランキングは4位。要するに、CKからやられ杉orz あと、「セットプレーからの得点数」17位。順位もさることながら、その得点数が5。うち是のPKが3。残り2のうち1は(おそらく)柏戦での古橋のシュータリングシュータリングはナビ杯ホーム名古屋戦でしたね。柏戦のは、FKからアキのゴールと思ったら、アキがヘディングで打った土屋の頭に当たって入ったオウンゴールだ(笑)まぁ、どっちにしろ古橋がらみってことで)・・・早い話、セットプレーからのまともな得点がほとんどない。これはいかんなぁ。

さて、以上の点から改めて見えてきた、今年のセレッソのスタイル。

  • 基本は守備重視。
  • ラインは高くないが、前からのプレス、思い切りのいいタックル、そして主にブルーノがインターセプトでボールを奪う、いわば超積極的守備
  • 奪ったらあまり手数をかけず、短時間で確実にゴール前まで運ぶ。サイドチェンジもおそるるなかれ。これはここ数年のセレッソの伝統スタイル。
  • ただし、シュートは近年のセレッソとしては最低レベル。
  • 攻撃面での鍵は右サイド。
  • PK以外のセットプレーには期待薄。
  • 相手FKがゴールに結びつくことは少ないが、CKでの守備が下手。

・・・といったところでしょうか。

ただし、これらはあくまでボールと人との関係を数字で表しただけのデータに過ぎない。この手のデータには「数字のマジック」とでも言うべき落とし穴が必ず存在している。

例えば、ファビーニョ。パス関連の数値はどれも低いが、彼が前半戦の半分ほども棒に振っていたことを忘れてはならない。逆の見方をすれば、たったこれだけの出場時間で、これだけのパスを成功させているのはなかなかすごいとも言える。

そしてアキ。数字だけを見ていると、今年のアキがどれだけセレッソの攻撃を支えているかなど、絶対にわからない。もともとFWよりもMFの方がボールに絡む機会が多いのは当然で、しかもセレッソの布陣3-6-1で1を担当するアキには、基本的に「ここ一番」というところでしかボールは入ってこない(自分が下がってボールをとりに行くことはあるけど)そして「ここ一番」で入ってきたボールを、アキは「ここしかない」というところに絶妙に出してくれる。それがビッグチャンスにつながる。はっきり言って、モリシや古橋がもっとちゃんと決めていてくれれば、アキのアシスト数はもっと増えているはずなのだ(苦笑)

こういう「数字には表れないけどチームにとって大切なプレー、それをしてくれる選手」をきちんと認識し、賞賛し、応援する。それは、メディアでもライトなファンでもない「サポ」の大切な役割なのかもしれないね。