最後の1点、最高の1点

上でも少し触れたのですが、PKの話。

各紙によって微妙に情報が違うのですが、まとめると「ヨシトは最初アキに蹴ってもらおうとしたけどアキは断り、徳さんにも断られたので、最後は『自分で行きます』と宣言し、見事に決勝点を決めた」ということでよろしいでしょうか。

んでね、アキが断った理由なんですけど・・・新聞によっては「尻込みした」かのように書かれてるのですが、あくまで直感的なものですが、どうも違う気がするんです。だってアキ、今年の1stに何度もPK蹴って全部決めてましたが、その中で「PKは一度も外したことがない、絶対の自信がある」といった発言をしていたような記憶があるんですよ。

ではなぜ、アキはこの大事な場面でPKを蹴らなかったのか。ここからはあくまで推測です。

アキにはわかってたんだと思う。これは絶対にヨシトが決めなければいけない場面なのだと。

2年前の9月、川崎フロンターレ戦。既に2得点を挙げた後に得たPKのチャンス。これを決めればやや変則的ながらもハットトリックという最高の場面で、しかしヨシトは外してしまった。その後、守備の乱れをつかれて2失点、結局ドロー。もしあの時PKを外していなければ、勝ち点3を得ることができていたはずで、それは昇格争いの終盤戦で大きなアドバンテージとなっただろう。さらにその直後、U-21代表として参戦したアジア大会の初戦でもPKを外してしまう*1

この連続失敗がよほど答えたのか、その後ヨシトは長くPKを蹴ることはなかった。PKを蹴るのは、バロンであったり、眞中さんであったり、アキであったり。今年に入って久々に蹴ったけれど、それはアキがベンチメンバーにも入っていなかった1st神戸戦でのこと。

そう、アキにはわかっていた。間もなくスペインに旅立つヨシトが、向こうでも活躍して結果を残すためには、最後にもうひとつ、どうしても克服しなければならない壁があるということを。

単なる1試合の勝敗がかかった場面ではない、残留争いの最後の最後で、チームを救うか否か、まさに運命の分かれ道となるその1点をもぎ取ることができるか。しかもPKという、自分ひとり、誰も助けてはくれない、何をも言い訳にできないような状況で、それでも冷静にゴールを決めることができるか。

アキは「そのPKはお前が蹴るべきだ」と言いたかったのだろう。アキの思いを察したからこそ、徳さんも首を横に振ったのだろう。

もちろん、セレッソにとっての優先順位はヨシトの成長よりもチームの勝利です。その意味では、あの場面でPKを固辞したアキは、あるいは批判されても仕方がないかもしれない。

でもね。アキにはもうひとつわかっていたのではないかな、と思う。ヨシトは絶対にあの場面で「決める」んだってことが。ヨシトが本当に、心の底から「ここで決めるんだ、絶対に勝つんだ」と強く強く願った時、その思いは絶対に叶うんだ、ということが。

大久保嘉人はそういう星の元に生まれた。そういう運命を背負ってこれまでたたかってきたし、これからもたたかい続けていくのだろう。

ヨシト、感謝しなさい。お前のことを理解し、信じて、成長させてくれる先輩たちに。そういう人たちに引き合わせてくれた「サッカーの神様」に。そして、スペインでも活躍し、成長し続けることで恩返ししなさい。私もここで、大阪の片隅で「大久保嘉人」という一等星が輝きを放つのを見つめているから。

(追記)ここまで書いといてなんだけど、案外真相はこんなだったりするのかも(笑)南方さん面白杉ます。

*1:同じく代表に参加していた、当時セレッソでチームメイトだったネモは「なんとなく外しそうな気がした」らしい(苦笑)