大久保嘉人定点観測に見る、A代表と五輪代表の差

よーし、パパ現実逃避しちゃうぞー(汗)てことで、先週から引っ張っていたこのお題について。

まず、自分の過去ログから2つばかり引っ張ってきます。まず、2/12イラク戦の直後ですね。

あーとりあえずひとつだけ(結局言うんやん)ヨシト、出てきた時からなんか覇気がなかったと思いました。どうしたんだろう。

さらにそれを受けて、2/13

ヨシトが出てきたところもイマイチ記憶があいまいでして、あー出てきたのね、ふーん、って感じだったのですが、たぶん三都主のゴールの後だったと思うのですが、顔がアップになった時に「え?」と思ったんですよ。それが昨日も書いた「表情に覇気がない」ってことなんですけど。あの表情を見た時に「あ、今日は(も)点取れんわ」と思って、案の定その通りになりました。

(中略)

いずれにしても、ヨシトの心はあのピッチの上になかったんだと思う。そもそも、あの時出場した日本代表で、ちゃんとあのピッチに集中してた選手が何人いたのかも疑問ですが(苦笑)

それからほぼ1ヶ月後の3/16。言うまでもなくアテネ五輪最終予選日本ラウンドのレバノン戦です。

とりあえず、ピッチに入る前の様子がBSで映ってて、あの顔見た時に「あ、違う」と思いました。闘志むき出し、というのではなく、かといって冷めてるわけでももちろんなく、その程良いブレンド、といいますか。

セレサポで、偶然にもデビュー戦に居合わせた*1縁もあってずっとヨシトを応援し続けている私が見た、2つの場面でのヨシトの表情の違いでした。

この比較を見てもわかるとおり、五輪最終予選でのヨシトは、A代表とは比べものにならないくらい気持ちがこもっていた。それも単に「ゴールしたい」という自分本位な気持ちではない。本当に、チームの一員として貢献したいという思いがあったのだと思います。

「五輪最終予選における大久保嘉人のプレーのうち最も価値あるものをあげよ」と質問したら、ほとんどの方が「レバノン戦の勝ち越しゴール」と答えるでしょう。もちろんそれが正解です*2。が、ヨシトウォッチャーの私にとってもっとも価値あるプレーは、UAE戦の後半12分以降です。そう、UAEの10番マタル選手が退場し、この試合での勝利がほぼ決定づけられた瞬間の、その後。

あの時点で、ヨシトは2ゴールしていました。しかも相手は10人。あの日の(というかあの予選での)ヨシトのコンディションなら、3点目つまりハットトリックだって狙えた。実際に会場にいて、それを期待したサポの方も少なからずいるでしょう。しかし、あの時ヨシトは別のプレーを選択した。自らトップ下の位置に下がり、平山や田中達也に決定的なパスを出そうと試みた。そしてそれはほぼ成功していた、と言っていいでしょう。あの日の達也や平山にほんの少しの運が足りなかっただけで。

重要なのは、得点につながったかどうか、ではなく、ヨシトが自分で得点するというプレーを「自ら」捨て、アシスト役に徹するプレーを「自ら」選択した、というその一点にあります。試合直後にも書きましたが、達也に対しては前半で彼のゴールを自らのオフサイドでフイにさせてしまったことへの詫び(笑)平山に対しては高校の先輩・後輩というよりも、ひとつ上のカテゴリに招集されて大きな期待を受けながら実戦では思うような結果が出せずに苦しんでいる彼を楽にしてやろう、という思いがあったんじゃないかと思います。何度でも言いますが、山本さんはそんな指示を出してはいません。達也や平山が要求したわけでもありません。ヨシトが選んだのです。そしてもちろん達也も平山もすぐヨシトの意図に気づき、ヨシトからのパスを受ける準備を常に整えていた。それが何度かあった決定的なチャンスにつながったのだと思います。

私は思います。「ピッチ上における自由と自律」とは、まさにこういうことを言うのではないのか?と。

五輪代表に関しては、私はどうしてもヨシトの側からしかモノを見れないけれど(他の立場から見れる方随時募集中)ヨシトにはもちろん「アテネに行くためにはまず結果を」という気持ちがあり、また同時に「みんなでひとつのチームなんだ」というチームメイトへの思いがあった。それがあの時のプレーになったんじゃないだろうか。

天皇杯勝戦でヨシトが号泣したのは「負けて悔しいんじゃない。仲間ともう一緒にプレーできないのが悲しいだけ。」だった。仲間を思う純粋な強い気持ちが、ひとつ前の準決勝でのあの衝撃的かつ感動的なVゴールを呼んだのだと私は思っています。いろいろと短所の多い選手ではあるが(主に精神面)「大切な仲間」のためなら恐ろしいまでの能力を発揮させることができる、それが大久保嘉人です。その「仲間を思う気持ち」をヨシトに呼び起こさせる「何か」が五輪代表には確かにあった、ということなのでしょう。

一方、A代表はどうなのか。くどいようだが、無断外出については一切弁解の余地なしです。いくら先輩命令だろうが何だろうが、行ってしまうヨシトはやっぱり悪い。しかし、イラク戦でのあの覇気のない表情を思い出すたび、ヨシトを奮い立たせるだけの「何か」はあの場所にはなかったのだな、と思わざるを得ません。周囲の空気によってプレーの波が激しすぎることは選手としては大きな弱点ですが、そもそもそんなよどんだ空気に満ちたチームは「チーム」と呼べるのか。そしてそんなものが「日本代表」なのだとしたら。そんなバラバラな「チームではないただのオールスターメンバー」のどこに自由と自律を期待できるというのか。

シンガポール戦の代表候補が発表された翌日、20日付けのスポニチ記事を見て気づいたのですが、

大久保はA代表落選に「罰としていいと思いますよ」と淡々と話した。

「淡々と」ってとこがミソですね。この発言内容からしても、ジーコが怒ろうが泣こうがわめこうが、もうヨシトの気持ちは今のA代表にはないんだな、と思わざるを得ません。A代表に選ばれていた頃はそれなりに誇りもあったし焦りもあっただろうけど、五輪代表の空気に触れた後では、あの雰囲気に戻りたくはないのだろう・・・と考えるのは、邪推すぎますか?(セレッソセレッソでマターリとしたのどかな雰囲気ですしね(苦笑))

それにしても遠藤のコメントはなぁ・・・おりたさんは怒り狂っておいでですが、私なんかはこれを見て「あぁ、やっぱりこいつら”チーム”でもなんでもないわ」と確信しました。もしこれがガンバ内部での話で、処分されるのが松波だったり吉原だったり中山だったりしたら(あくまでも例ですので気を悪くなさらないでください>ガンバサポ及びそれぞれの選手のファンの方)彼は同じせりふを言うだろうか?と考えると、やはり言わない、いや言えないだろうな・・・と思うのですよ。「同じチームの選手を外に向かって批判する」というのは、ものすごくエネルギーのいることのはず。結局のところ、チームとしての一体感がないからこそ、こんな風に簡単にチームメイトを批判できてしまうんでしょうね。本当にもう、チームとしては末期状態なんだな、という感想。

*1:2001.3.17の浦和戦@駒場。その試合が私のアウェイデビューだった。あの頃を思えば、まさかこんなにアウェイに足を運ぶようになるとはねぇ・・・(苦笑)

*2:ちなみに、後で調べてみたらこのゴール、私が思っていた以上に意味のあるものでした。その話はまた明日にでも。